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□ 「不易」と「流行」

 コロナによって大きく変わった状況を表す言葉として思い浮かぶのは「不易流行(ふえきりゅうこう)」です。
 「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」。島本の税理士
 江戸前期の俳人、松尾芭蕉が『おくのほそ道』の旅をしながら会得した概念だといわれ、その示唆に富んだ教えは現在でも多方面で支持されています。
 「不易」とは変わらないもの。
 時代を経ても世の中が変化しても、決して変わらないもの、もしくは変えてはいけないもの。
 「流行」とは世の中の変化に伴って変わっていくもの、もしくは変えていく必要があるものです。
 商売でいえば、理念やミッションが「不易」に当たるでしょう。
 その志をどう実現していくか。
 時代や社会の変化を見据えた取り組みが「流行」だと思います。
 コロナ禍で急速に発展したテクノロジーはイノベーションを促し、常識を大きく変えました。
 出社しなくても仕事ができ、オンラインで顧客とコミュニケーションをとれます。
 大金を払って大々的に広告宣伝しなくても、無料のデジタルツールを活用して集客することも可能です。
 しかし、こうした「流行」は、時代に合わせて新しいことをやってみるという単純な話ではありません。
 芭蕉はさらに「その本は一つなり」、すなわち「両者(不易と流行)の根本は一つ」とも述べています。
 つまり「流行」は「不易」という原理原則があってこそ。
 原理原則に立ち返って物事の本質を問い、その上で新たなことを冷静に判断できる情報・知識・マインドセットを持っていなければ、ただ「流行」に惑わされるだけです。
 コロナで「流行」は加速しましたが「不易」は変わりません。
 商売にとっての「不易」は何か。
 「不易」の何たるかを知っているからこそ逆風でも歩みを止めず、常識に捉われないで変化に対応し、新しい展開を作っていけます。
 おくのほそ道は全工程2400キロ。
 約150日間の旅でした。
 旅路で詠んだ俳句の数を思えば、思索の旅だったともいえるでしょう。
 これから先も何が起こるか分かりません。
 その時々で最適な「流行」を捉えるために、原理原則を洞察する努力を惜しんではいけないと思うこの頃です。

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