□ 商売のフシを作る
竹に節がなければズンベラボーで、とりとめがなくて風雪に耐えるあの強さも生まれてこないであろう。
竹にはやはりフシがいるのである。
同様に、流れる歳月にもやはりフシがいる。
ともすれば、とりとめもなく過ぎていきがちな日々である。
せめて年に一回はフシを作って、身辺を整理し、長い人生に耐える力を養いたい。
そういう意味では、お正月は意義深くて、おめでたくて、心もあらたまる」。
これは「経営の神様」といわれた松下幸之助の言葉です。
今でも名言として多くの人の心に響くのは、新しい年の始まりを「フシ」と捉えて襟を正す感性が、日本人の普遍だからでしょうか。
物事をどう捉えるか、どう解釈するかで、人生の重みや深みはまったく違ってきます。
特に商売で風雪に耐えた経験が多い人には、松下幸之助の言葉がじわじわとくるのではないかと思います。
ところで竹は不思議な植物です。
中身は空っぽで節があり、木でもなければ草でもない。
「竹、節ありて強し」の言葉どおり、節のおかげで上に上にと高く伸びても強度が保たれるそうです。
また一節目が割れると一気に割れていきますが、その一方で簡単には折れないしなやかさも持ち合わせています。
高さ何メートルにもなる竹が風雪に耐えられるのは、節が作り出す「強さ」と「しなやかさ」の剛柔併せ持った性質によるものなのです。
近年「レジリエンス」という言葉を見聞きすることが増えました。
世界的に注目されている言葉で、日本語では「折れない心」「精神回復力」などと訳されていますが、要するに「しなやかさ」のことでしょう。
心も体もすべてにおいて「強さ」を追求した時代が長く続いたあと、これからは「しなやかさ」が時代を生き ていく心得となるのかもしれません。
柔らかく、しなやかなものは、堅くて強いものより丈夫だったり長持ちだったりします。
この新年をフシにして、今年も強く、そしてしなやかに、長い人生に耐える力を養っていきましょう。
ちなみに、地上から出ている竹の1本1本は、すべて地下茎でつながっています。
この「つながっている」というイメージは心強いものですね。