□ 環境という圧力をバネにする
「秋」の「桜」と書いて「コスモス」と読みますね。
道端や野原に咲き乱れるコスモスの群れは日本の自然に溶け込んだ風景でも、実は原産地メキシコの外来種です。
細くて小さな葉が特徴で、華奢(きゃしゃ)な姿はいかにも弱々しい少女を連想させますが、台風で倒れても茎の途中から根を出して再び立ち上がる力強さを持つ、たくましい花なのです。
この野生の力は、メキシコの厳しい環境がもたらした自然の英知でしょう。
平均標高1700メートルの高原で、メキシコ湾から吹く風速10メートルの乾燥した強風にさらされながら育ったコスモスは、葉を小さくすることで乾燥と強風から身を守ってきました。
近年は、気候変動によっても多くの生物が環境への適応を強いられています。
その結果、既存の種から新しい種ができたり、単純な原始生命から複雑多様なものへ進化したりと、動植物は種の保存を賭けて懸命に進化を続けています。
もちろん人間も同じこと。
特に昨年からの世の中の流れは、まさに環境という圧力にどう適応するかを人間が試されているとしか思えません。
例えば「イモトのWiFi」で知られるエクスコムグローバルという会社は、海外旅行の壊滅で売り上げが98%減となったとき、まったく畑違いのPCR検査サービスをわずか数カ月間で実現したのは記憶に新しいところ。
生態系に変化をもたらす外来種が嫌われるように、同社に対してもネット上では賛否両論でしたが、社長の西村誠司氏は「アンチがいてこそ熱狂的なファンができる」という信念から、あえてリスクを取る覚悟で新事業に望んだようです。
外来種のコスモスは、そのたくましさゆえにほかの植物の自生を妨げることもあり、一種の自然破壊につながると心配する声も聞かれます。
けれどコスモスはそんなことなど気にも留めず、今日もひょうひょうと風に吹かれて います。
松下幸之助は「逆境も順境もよし。与えられた環境を素直に生き抜く」という言葉を残しました。
厳しい環境が英知をもたらすならば、私たち人間も今の状況をチャンスと捉え、新しい風に吹かれながら、ひたすら商売にまい進していきたいものです。