□ 過去に学び、自然に学び、人に学ぶ
10年前の平成23年は「水」の年だといわれました。
世界各地で水害が相次ぎ、日本では甚大な東日本大震災による大津波が、尊い命や人々の生活や大事な思い出を奪っていきました。
水にまつわる悲しい出来事が多かった一方、夢のある「水」の話題もありました。
アメリカ航空宇宙局(NASA)に よれば、太陽系以外で約1,200個の惑星候補が発見され、そのうち54個には生命に欠かせない水が存在する可能性があるとのことでした。
水と空気のある地球は 「奇跡の星」と呼ばれますが、奇跡の星がほかにもあるかもしれないと話題になった記憶があります。
命を育む一方で命を奪っていく水。
水に感謝しても、水を恨んでも、水はただ水としてそこにあるだけです。
それが現実というものであり、あるがままの現実を受け入れることで私たちは自然と共生していけるのでしょう。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」。
川の水は絶えることがなく、しかも決して同じ水ではないという『方丈記』の冒頭の一節は、常に遷(うつ)り変わっていくこの世の儚さを説いています。
すべてのものは刻一刻と変化して、世の中は思い通りにいきません。
それを重々承知の上でも、こんなはずではなかったと嘆きたくなることもあります。
頭で分かっていても心がついていかない。
その時間のどれほど苦しいことでしょう。
その苦しみから自分を解放するには現実を受け入れるしかありません。
1994年に起こった松本サリン事件で一時、犯人扱いされた河野義行さんを覚えているでしょうか。
本人は犯人と疑われ、奥さまはサリン被害で意識が戻らず、長い療養生活の末に亡くなられました。
それでも河野さんは言います。
「現実は現実。与えられた人生を恨みの感情で生きるのは損。与えられた現実の中で最大限に生きる」。
どうにもならない現実を肯定する勇気が私たちに気づきや想像力を与えてくれます。
頑張っているのに何も変わらないと思うのは、ゆく河が止まって見えるのと同じこと。
行動していれば物事は確実に進んでいきます。
歩みを止めずに共に行きましょう。