□ 微妙な色合いの違い
東京スカイツリーのオープンから7年が経ちました。
昭和を代表する東京タワーに比べて近未来を感じさせる東京スカイツリーのカラーデザインは、日本の伝統色である「藍白(あいじろ)」をベースにしたオリジナルカラーの「スカイツリーホワイト」です。
藍白とは、藍染めの際に最初の過程で現れる極めて薄い藍色のこと。
ほとんど白に近い色味ながら純白よりわずかに青みがかった白で、別名「白殺し」と呼ばれるそうです。
白磁のような白いタワーは青い空に映え、東京タワーとは異なった趣きを放っています。
日本特有の文化や四季折々の生活の中で育まれてきた伝統色は1000色あまりといわれ現在、再現できる色だけでも300色以上あるそうです。
しかも一色一色すべてに名前があり、その多くが植物の色に起因しているのは、日本ならではの四季の移り変わりによるものでしょう。
例えば、東京スカイツリーのロゴマークにも使われている「刈安(かりやす)色」の「刈安」とは、山野に自生するススキに似た植物です。
刈り取りが簡単だったのでこの名が付いたそうです。
その刈安を使って染めた、やや緑がかった淡い黄色を刈安色と呼びますが、今では「薄い黄色」などと大雑把な表現をされています。
トキの羽の色に似た薄いオレンジがかった桃色には「朱鷺(とき)色」という美しい名前が付いています。 しかし、トキが絶滅種であるように朱鷺色も絶滅状態で、今や「ピンク色」が一般的となりました。
価値の多様化、価値の最大化などといわれ、いかに違いを出すかに誰もが躍起になっています。
商売も「違い」の競い合い。
「少しの違い」を「大きな違い」に見せるための演出が派手になる一方で、肝心の商売の中身が大雑把になってはいないでしょうか。
日本人はもともと四季に移ろう色彩を生活に取り入れ、ほんのわずかに明度が違う色を敏感に見分ける力を持っていました。
自分も同業者も、商売の色は一見「黄色」に見えたとしても実は、菜の花色、レモン色、山吹色と黄色にも色々あります。
その微妙な色合いの違いが、それぞれの商売の価値を最大化するヒントかもしれませんね。