□ こぶしが咲けば春が来る
早春の頃、ほかの木に先駆けて白い花をこずえいっぱいに咲かせるこぶし。
直径10cm程の大きな花は、新葉より早く開花します。
「こぶし咲く、あの丘、北国の、ああ北国の春」。
千昌夫さんの『北国の春』の歌詞でもおなじみの花です。
東北地方では、こぶしの花が咲き出すともうすぐ春がやって来ます。
寒い冬を乗り越えてきた北国の人々は、こぶしの花が咲く日を今か今かと待ち望んでいます。
昔はこぶしの花の開花時期から農作業のタイミングを判断したり、花の向きから 豊作かどうかを占ったりしたそうです。
そのためこぶしは「田打ち桜」「田植え桜」「種まき桜」などとも呼ばれています。
昔の人は季節の変化(自然現象)から農作業の時期を判断していました。
植物がそれぞれの特性に適した季節に開花することを体験的に知っていたのでしょう。
子孫を残すために不可欠な植物の知恵が、人間の生活の知恵にもなっていたのです。
多くの植物がそれぞれ決まった時期に花を咲かせるのは、昼と夜の長さから季節を認識して反応する「光周性」という現象によるものだそうです。
植物の光周性はきわめて繊細で、明るい時間と暗い時間の差が30分程度あれば敏感に反応するのだとか。
夜間でも温室内に照明をつけて日長を調節すると植物は季節を勘違いします。
季節外れの花や野菜が店頭に並ぶのは植物の光周性を利用した人間の知恵であり、見方を変えれば人間の欲でもあります。
その昔、自然と人間は今よりも良い関係でした。
私たちの祖先は自然を尊重し、敬意を払い、恵みに感謝しながら自然の知恵をお借りしていたのでしょう。
春が近づけば自然とこぶしの花が咲くように、何事にもそれに相応しい時期があるものです。
真夏にこぶしを咲かせようとすればしっぺ返しをくらうかもしれません。
欲も行き過ぎれば商機を逸してしまいます。
何事にも焦ることなく、知恵で商機を見出したいものですね。