□ 「終わり」をイメージすると見えてくるもの
人生をより良く締めくくるための準備を「終活」と呼ぶようになりました。
最期まで精一杯生きることを自分に誓うための、自分に対する「喝」のようなものでしょう。
「終わり」をイメージすると「今」が見えてくるといわれます。
長年、終末期ケアにたずさわってきたオーストラリアの女性看護師が書いた本からもそのことが読み取れます。
彼女は、患者たちが死の間際に語る言葉を聴きとって一冊の本にまとめました。
その本によると、死を間近にした人が口にする言葉のトップ5は、
「もっと自分を幸せにしてあげればよかった」
「友人といい関係を続けていられればよかった」
「もっと素直に気持ちを表す勇気を持てばよかった」
「自分自身に忠実に生きればよかった」
「あんなに一生懸命働かなくてもよかった」です。
誰もが悔いのない人生を望んでいますが、本をまとめた看護師によれば、死を覚悟した患者のほとんどが悔恨(かいこん)や反省の言葉を残すそうです。
何かを犠牲にしてまで仕事をしたり、やりたいことを我慢したり、自分の気持ちを押し殺したり、友人と仲違いしたり。
そのときはそれなりの理由があってのことだっ たとしても、振り返ってみれば、「何より自分を大事にしておけばよかった」という患者たちの後悔は、私たちが今後の人生を考える上でとても示唆に富んでいるでしょう。
「今日が人生の最後だと思って今日を生きる」というのは、人生の後悔を減らすひとつの考え方です。
あのスティーブ・ジョブズも、「今日が人生最後だとしたら、今日やることは本当にやりたいことだろうか」と毎日、自分に問いかけていたそうです。
それでもし「ノー」が何日も続いたら、「何かを変えろ」というサインであろうと――。
単に商売を続けることだけが多くの経営者の目的ではないはずです。
「終わり」をイメージしたときに浮かぶ後悔や反省こそ、商売を通じて成し遂げたい真の目的ではないでしょうか。