□ 形の折り目、心の折り目
日本には「道」という考え方があります。
「空手の道を極める」といえば、空手(武道)の精神真髄を学んで習得し、明らかにすること。
その過程は「形から入り心に至る」です。
武道では、技の習得とともに礼節の大切さも合わせて指導しています。
礼とは相手を尊敬し、自分を謙遜し、行いを丁寧にすること。
節とはその場に応じた行動をわきまえることです。
しかし、こうした精神論だけを説かれてもなかなか理解できません。
そこで、稽古の前後に正座で黙想し、道場訓を斉唱してお互いに挨拶を交わすという「形」を繰り返す中で礼節の意味と大切さを理解して、それが身につき、やがて「心」に至るのだそうです。
誰にでも気持ちよく挨拶ができ、自然と感謝の言葉が出て、敬う立場の相手には敬意をもって謙虚な態度で接する。
昔の日本人なら普通にやっていたことでしょう。
それが今では、あいさつができるだけで「ちゃんとしている」と褒められるような時代です。
「感謝だ」「思いやりだ」「おもてなしだ」と声高に訴えても、形が崩れていたのでは心には至れないのではないでしょうか。
心という目に見えないものを整えるには、心としっかりつながっている「形としての所作(しょさ)」を整えることが大切なのだそうです。
わきまえのある所作は 誰の目にも美しく映るだけでなく、礼節を重んじる人や折り目正しい人は周囲か ら好感を持たれ、信頼され、たくさんの人に慕われるでしょう。
たとえ初対面でも、相手のことをよく知らなくても、私たちは所作という形から多くを感じ取ってその人を判断しています。
心を整えたければ所作を美しく。
折り目正しい行動は心の折り目を正します。
色々なことを頭で理解していても、それらを当たり前のこととして実践している人は存外少ないのが世の常ですが、「まずは自分から」の気持ちで振る舞いに気を付けたいものです。
商売繁盛とは、そうした先にあるのかもしれません。