□ 一行三昧
新年にあたり今年の目標を立てた方も多いでしょう。
ぜひともその目標を達成するために、「一行三昧(いちぎょうざんまい)」の気持ちで取り組んでいきたいものですね。
「これ」と決めたら心をひとつにして邁進することを「一行三昧」といいます。
そこで、一行三昧がどのようなことかを物語る興味深い逸話をご紹介しましょう。
古代中国・漢の李将軍は勇猛な武人で知られた人物であり、特に弓術では天下無敵と称えられていました。
ある日、猟に出かけた将軍は一匹の大きな虎に出会います。
大虎は将軍から遠く離れた場所にうずくまっていました。
将軍はすぐさま 矢を構え力の限り弦を引き、虎に向かって放ちました。
矢は見事に獲物をとらえ、虎の体に矢が立ちました。
「これはしめた!」と将軍は勢い込んで虎のそばへ走り寄りますが、虎だと思っていたのは実は虎の形をした大きな岩だったのです。
岩に矢が立つなど古今東西聞いたこともない。
将軍は得意になり、もう一度やって見せようとばかりに再び矢を射りますが、何度やっても二度と岩に矢が立つことはありませんでした。
最初に「虎だ」と思ったときは、虎を射止めようとする一念以外、ほかには何もなかった将軍は、まさに「一行三昧」だったのです。 ところが、岩に矢が立ったと知った後では、「俺の弓術はさすがだろう。どうだ見ておれ」という雑念が邪魔をして、一行三昧になりきれなかったのです。
茶人の千利休は茶の湯の極意を、「火をおこし、湯を沸かし、茶を喫(きっ)するまでのことなり、他事ある可(べ)からず」と述べたそうです。
様々な作法や決まり事がある茶の湯の世界にあって、なおそのことにしばられず淡々と茶をたしなむ。
まさに一行三昧の極みです。
言うは易く行うは難しではありますが、素直な心で日常生活に向き合うことも一行三昧だそうです。
時に弱い心に負けてしまったとしても、何度でも奮起して前を向き専心していきましょう!