□ 血の通った組織
ある会社のA社長は組織というものを 「クルマ」 に例えていました。
「クルマはエンジンやハンドルやタイヤなど様々な部品の集合体だが、部品だけを集めてもクルマにならない。
各部品がコードでつながってはじめてクルマという完成品ができあがり、ようやく動くようになる。
これは組織も同じだろう」 と。
組織には上下関係がありますが、上下の関係だけで成り立っているうちは単なる人の集合体であって、自主性も協調性も創造性も期待できません。
しかし、上下関係の中にも横の繋がりが生まれるとチームとして機能し始めます。
横の繋がりとはクルマでいう部品同士をつなげる 「コー ド」 のようなもの、すなわち人間関係をいいます。
ところが困ったことに、人間関係には、クルマをつくるような 「決められた工程」 がありません。
相手にも感情があるので、
「今から人間関係を結ぼうじゃないか!」
「そうしよう!」
とはいかないから苦労するのだとA社長は言います。
そこでA社長が心掛けていることは、部下から 「この人は信頼できそうだ」 と思ってもらえる行動だそうです。
基本は小さな約束を守ること。
つまり言動の一致です。
「明日の朝電話する」 と言ったら翌日の朝一番で電話を入れる。
それが小さな用事でも、朝一番で電話する必要性がなくても、約束を守ってもらえると 「私はこの人から大事にされている」 と感じて、自然と相手に好意を持つものだとか。
心理学的には 「信頼」 と 「好意」 は同一次元のポジティブな感情とされており、相手から好意を持ってもらえると信頼関係を築きやすいのだそうです。
「すぐに確認してきます」 と言って悠長に歩いて行く人と、その場から急ぎ足で立ち去る人と、どちらが好印象かは比べるまでもありません。
言葉と行動の一致は好意につながります。
好意は 「見えないコード」 となって人と人を結び、やがて 「信頼」 というクルマが動き出します。
上下関係だけでも仕事はできますが、そこに人間同士の付き合いがあれば血の通った組織となるのでしょう。